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九州と本州を結ぶ関門橋。関門海峡という日本有数の交通の要衝を強化する取り組みとして「下関北九州道路 構想」が注目されています。
この構想は、福岡県北九州市と山口県下関市をさらに強力に結ぶための道路建設計画です。関門橋や関門トンネルを通過する膨大な交通量に対して混雑や渋滞の問題が見られ、一たび事故や豪雨など自然災害が発生すると周辺地域への影響も甚大です。国土強靭化の視点からも交通インフラの強化は不可欠です。
下関北九州道路 構想とは?
このプロジェクトは関門橋及び関門トンネルにおいて、老朽化した既存インフラの負担を軽減し災害リスクの低減を図るとともに、地域の交通を円滑にすることを目指しています。
関門トンネル・関門橋の代替ルートの確保、さらには循環型ネットワーク形成による関門地域の一体的発展を目的とした道路で、以下4つの政策目標を達成するために整備する道路です。
4つの政策目標
- 暮らし:北九州市・下関市の距離短縮により経済活動の活性化、交流人口増加と共に生活圏の拡大
- 産業・物流:産業・物流拠点の連絡性を高め、多重性を確保することで迅速で安定した物流を実現
- 観光:関門海峡に多数存在する歴史・文化遺産などの観光資源を有効活用
- 代替ルート:災害・事故・補修工事等、通行止め時における関門橋や関門トンネルの代替ルート機能
下関北九州道路のルート
- 起点:山口県下関市の旧彦島有料道路
- 終点:福岡県北九州市小倉北区西港町の北九州都市高速道路2号線
- 全長:全区間およそ8㎞・内2.2㎞つり橋区間
- 道路:4車線・自動車専用道路
構想についてこれまでの経緯
- 1980年代後半「北九州地域産業・港湾都市計画調査」構想立ち上げ
- 1991年(平成3年)「関門海峡道路整備促進期成同盟会」設立
- 1998年(平成10年)第5次全国総合開発計画「海峡横断プロジェクト」として国による調査開始
- 2008年(平成20年)財政難に伴いプロジェクト凍結
- 2017年(平成29年)関門トンネル・関門橋の老朽化・地元の要望等を踏まえ「下関北九州道路調査検討会」を設立
環境影響評価(環境アセスメント)・都市計画
2020年(令和2年)国による「計画段階評価」が開始され、地域の課題や達成すべき目標、地域の意見等を踏まえ、複数案の比較・評価を行うとともに、事業の必要性及び事業内容の妥当性を検証する取り組みをおこなってきました。
2021年(令和3年3月)概略ルート・構造など国による対応方針が決定し、2021年(令和3年4月)環境アセスメント・都市計画を進めるための調査を開始しています。
正式な事業化決定の前に以下項目について手続きが必要になります。
- 環境影響評価(環境アセスメント)
- 都市計画
環境アセスメント 手続き
- 配慮書:事業位置・規模などの検討段階で環境保全のために適正な配慮をする事項について纏めた図書
- 方法書:どのような項目と方法で調査・予測・評価をしていくのかを提示
調査:測定・観察など
予測:事業を実施した場合の環境変化を予測
評価:実行可能な範囲内で出来る限りの対策がとられているか、基準・目標などの達成度合い - 準備書:調査・予測・評価・環境保全対策の検討結果を示し、環境の保全に関する考え方を作成
- 評価書:準備書に対する意見を踏まえて検討し、必要に応じ準備書の内容を見直して作成
- 2020年(令和2年12月)環境保全の適正な配慮事項についての配慮書を作成
- 2022年(令和4年4月)環境保全の項目及び方法についての方法書を作成
- 2024年(令和6年10月)調査・予測・評価・環境保全対策の準備書を作成
環境影響評価(環境アセスメント)とは、大規模な事業・開発を実施するにあたり自然環境破壊などが無いよう事前に調査・予測・評価を行い、その結果を公表することで環境保全の観点から総合的かつ計画的により望ましい事業計画を作り上げていこうとする制度です。
都市計画 手続き
- ルート 素案:ルートの素案について地権者説明会を開催
- 都市計画 原案:都市計画の原案について市民説明会を開催
- 都市計画 案:市民からの意見により都市計画原案の変更(この度の原案についての修正は無し)
- 都市計画 審議会:学識経験者等の第三者からなる都市計画案について調査・審議
- 都市計画 決定:都市計画審議会の議決を経て都市計画が決定
- 都市計画 告示:都市計画の決定主体が正式に告示
- 2024年(令和6年5月)ルート(素案)が決まり都市計画の参考となる図面の報道発表
- 2024年(令和6年8月)北九州市と山口県が都市計画の原案を作成し北九州市民へ説明会実施
都市計画とは、都市の健全な発展と秩序ある整備をはかるため、制限を通じて都市全体の土地の利用を総合的・一体的観点から適正に配分するための計画です。また下関・北九州道路においての決定主体は北九州市と山口県になります。
引用:北九州市 都市計画
引用:北九州市 都市計画審議会
事業化に向けて
2024年11月現在、環境アセスメント「環境影響評価 準備書」が作成され公開。
今後「準備書」に対する地域の皆さんからの意見などを踏まえ、必要に応じて準備書の内容を修正し最終工程となる「評価書」を作成する流れになります。
下関北九州道路 都市計画についても「説明会資料 都市計画概要 その1・その2」が公開。
地域の皆さんから様々な意見などを幅広く募集しています。
引用:下関北九州道路 都市計画
「環境影響評価(環境アセスメント)」及び「都市計画」の手続きは、地域の自然環境への影響が十分に検討されており、環境保護と交通網の整備が両立するような構造設計が求められています。環境負荷を最小限に抑えるための技術的な工夫も計画の重要なポイントですね。
周辺地域の生態系・水質への影響・景観の変化など多岐にわたる要素が評価の対象となり、持続可能な循環型社会の構築を目指す取り組みが行われています。
環境影響評価 準備書
準備書の記述には、環境に影響を及ぼす可能性がある騒音・振動・水質・底質・日照阻害など14の項目について調査・予測・評価を行った結果「事業者が環境保全措置を講じることで、対象道路が周辺の環境に及ぼす影響はできる限り回避または低減が図られている」と評価されています。
また動物及び生態系については、予測の不確実性の程度が大きい為、適切に事後調査を実施することとしています。
以上のことから、下関北九州道路に係る環境保全について適正な配慮がなされていると評価されています。
下関北九州道路 都市計画原案 説明会
2024年(令和6年8月)、北九州市と山口県が都市計画の原案を作成し北九州市民へ説明会を実施。
今後も市民向けの説明会・公聴会・審議会を経て、早ければ2年後の2026年(令和8年)に都市計画が決定され北九州市と山口県が正式に告示されます。
都市計画決定の手続きが終了すると、いよいよ国が事業化の決定を行うことになります。
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