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2024年(令和6年9月17日)静岡県は、リニア中央新幹線の静岡工区についてトンネル工事の前段階で実施する県内でのボーリング調査を容認する意向をJR東海(東海旅客鉄道株式会社)に文書で伝達したと発表がなされました。
長らく議論が続いてきたリニア中央新幹線の建設において、静岡県が高速長尺先進ボーリング調査を認める方向で合意に至りました。これにより南アルプス山脈を貫くトンネル工事の進捗に期待が高まっていますが、環境や水資源への影響も依然として懸念されています。
リニア新幹線のボーリング調査とは?
建築・土木現場で耳にすることの多い「ボーリング調査」
地面にボーリングロッド(円筒形状の鋼管)を打ち込んで行う地盤調査になります。
ビルや道路、橋など、あらゆる建設物の安定を支える地盤。その地盤を正確に知るために行われるのがボーリング調査です。地盤を詳しく知るためのボーリング調査は、地下の土質や岩盤の状態を分析し、設計や施工の基準を決める重要な工程となります。
地下水位の測定や地下資源の調査、また地盤沈下や地すべりが発生するリスクなど、地質の状態を調べる際にも実施されます。
高速長尺先進ボーリング
リニア新幹線建設においてのボーリング調査は、トンネル建設に先立ち地質や地下水の流れを正確に把握するための重要な工程です。特に南アルプスを貫くトンネル掘削は技術的にも難度が高く、「高速長尺先進ボーリング」と呼ばれる調査技術が採用されています。
この技術は、通常のボーリング調査よりも深い地層まで高速で掘り進めることができ、工事の安全性と効率向上を目指しています。調査によって地質データが詳細に得られ、リスクの高いトンネル掘削に備えた適切な対策が可能になります。
ボーリング調査は、リニア新幹線の建設における安全確保と効率化に貢献するものです。地質や地下水の状況が明確になることで、工事計画の精度が向上し工事リスクの軽減も期待されています。
しかし一方で、掘削によって地下水流や周辺の環境に与える影響も懸念されています。特に静岡県内では、大井川水系への影響が懸念されており、調査がどのように実施されるかが注目されています。
静岡県は、以下の懸念点を挙げています。
- トンネル湧水による大井川の水資源への影響
- 生物多様性への影響
- トンネル発生土による南アルプスの環境への影響
静岡県がボーリング調査を容認した背景
2024年(令和6年3月29日)JR東海の発表により「東京・品川~名古屋区間において、2027年のリニア中央新幹線の開業目標を断念する方針を明らかにした。」との報道発表。
かねてより静岡県内での着工に関しては目途が立っていないなど、工事の遅れによる開業延期が度々指摘されていました。
リニア中央新幹線 2027年の開業断念
リニア中央新幹線計画は2024年3月29日JR東海の発表により東京・品川~名古屋区間において、2027年の開業目標を断念する方針を明らかにしました。
静岡県は長年、リニア新幹線のトンネル工事がもたらす環境への影響、特に大井川水系への影響を懸念してきました。このため、調査に対しても慎重な立場をとり、許可を見送ってきました。
今回、静岡県がボーリング調査を許可するに至った背景には、JR東海が新たな環境保全対策を提示したことがあります。具体的には、水資源保全に向けた対策やモニタリング強化の提案が行われ、これにより静岡県が一定の信頼を示した形です。
静岡県は、今後も調査結果の公開と透明性のある運営を行い、県民の不安解消と理解促進に努める方針です。
環境への配慮
静岡県・山梨県・長野県の3県にまたがる標高3,000メートルを超える山々が連なる山岳地帯は南アルプスとも呼ばれ、豊かな水源地として自然環境が保たれており、多種多様な動植物が生息しています。この地域は稀少な動物や植物の生息地として知られており、日本固有の種を多く見ることができます。
大井川水系への影響
静岡県内を流れる大井川は、貴重な水源として水道・農業・工業・発電の用水に利用されています。リニア新幹線のトンネル掘削によって地下水流に変化が生じ、水量減少の懸念が指摘されています。
ボーリング調査の段階から水資源への影響が注視されており、JR東海は水の供給に問題が生じないよう、地下水の還元対策やモニタリング強化などの措置を講じる方針です。静岡県も、この影響を最小限に抑えるための管理と対策を求めています。
調査後の環境保全対策
調査の結果を踏まえた後、トンネル掘削が開始される場合には、環境保全のためのさらなる対策が必要とされます。これには、地盤変動のリスク軽減や水資源の確保が含まれており、静岡県とJR東海の協力のもとで進められる予定です。
また、定期的な環境モニタリングも実施される計画で、長期的な環境影響の軽減が目指されています。こうした取り組みが、地域住民の理解と信頼を得るための重要な要素となっています。
プロジェクト遂行に向け
今回、静岡県がリニア中央新幹線のボーリング調査を了解したことで、トンネル建設の準備が一歩前進しました。しかし、大井川水系への影響や周辺環境への配慮が引き続き求められており、調査とその後の対応が慎重に進められています。
ボーリング調査によって得られるデータは、安全な工事進行や環境保全に欠かせないものであり、地域住民や環境団体が抱く不安を払拭するための重要なステップです。今後は、調査結果や環境への対応状況が明確に公表され、地域への透明性が確保されることが期待されます。
ボーリング調査は2025年(令和7年11月)までの予定。
リニア新幹線計画がどのように地域にメリットをもたらすか、そして環境保護がどのように進められるかを注視しつつ、静岡県・地域住民・JR東海の三者が協力し、プロジェクトが円滑に進むことが求められています。
この記事を書いたスタッフ
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